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『ただいまと言わせて』


 一人物思いに耽って翔は赤く染まった夕焼けを見つめた。

 何処までも赤い空。山奥であるこの学園は夕焼けも美しい。

 その美しい空はもう自分一人では行く事も出来ないウィンフィールドの空を思い出させた。

 父の生まれた国。多くの自然が残った美しき国。黒い翼の者達に蹂躙され、苦しみ続けていた国。

 そのウィンフィールドにいたのは僅かな時間だった。

 だが、なんて鮮やかに心の中に焼き付いている事だろう。

 何故ならば。

 あそこは彼と共に多くの時間を過ごした場所だから。

 あそこには大切な人がいる。

 もう一度会いたいと思う人がいる。

「逢坂先輩…」

 思わず漏れた呟きに翔はギュッと拳を握りしめると、身を翻して寮への道程を急いだ。





「翔、お前最近様子がおかしいけどどうしたんだ?」

「別に…何もないけど…なんで?」

 直人と一緒に夕食を食べていて聞かれた翔は苦笑しつつも逆に問いかけた。

「なんかすっげー寂しそうだし、時々ボーっとしてるからさ」

「そっか、サンキュ…な。でも、ほんと。何もないんだよ」

 一生懸命寂しさを隠していたはずなのに、すっかりばれて、心配を掛けてしまった事が心苦しくて翔は無理矢理微笑んで見せた。

「翔?」

 その翔らしくない少し大人びたとも言える表情に直人は首を傾げた。

「翔らしくないね」

「いたっ☆」

 ポコッと背後から頭を叩かれて翔は後ろを振り返った。

「櫂!」

「御園生!」

 唐突にそこに割って入ったその人物の名前を二人は呼んだ。

「我慢していないで、行けばいいじゃないか。以前自分が言ったんだろ。俺たち仲間がいるんだから。もう一人なんかじゃないんだからって」

 少しくらい甘えろよ、そう少し恥ずかしそうに言う櫂に翔は嬉しそうに目を細めた。

 でも、翔は無言のまま何も答えない。

「……」

「行くって何処に?」

 翔に変わって問いかけたのは直人の方だった。

「駄目、だよ。今は…駄目なんだ」

「翔…」

「?」

 イマイチ展開に付いていけない直人は自分だけ除け者にされた気がして苛ついたが、翔の悲しげな表情に無理矢理話を聞き出す事も出来ずに我慢していた。

「俺……」

 そう言ったまま言葉を失った翔は急に立ち上がると、ごちそうさまと言って走っていってしまった。

「翔!」

 追い掛けようとした直人の腕を櫂が引っ張って引き留めた。

 首を振る櫂に直人は何故だ、と問いかけた。

「ここじゃちょっと…取り敢えず話がしたければついてきて」

 そう言って背を向けた櫂の後を直人は黙ってついていった。



 櫂が自分の部屋の扉を開けて、直人に中に入るように、と無言で示した。

 無人だった部屋は真っ暗だったが、直人はサッとその中へと入った。

 すぐに電気がつけられて、二人部屋だというのに一人で使っているからか、少しだけ広く感じる部屋の様子が見て取れた。

 同室だった来栖が退学した後も、何故か新しいルームメイトは入ってこなかった。

「それで一体翔はどうしたんだ?」

 直人はクルリと振り返ると櫂を見つめた。

「まぁ、適当に座ったら」

「あ、ああ」

 言われて今は誰も使っていないベッドに直人は座った。

 櫂は自らの椅子に座った。

「君は誰か好きになった事ある?」

「…そ、それがなんか関係あるのか?」

 少し驚いて頬を染めれば素っ気なく頷かれた。

「そりゃ…まぁ少しくらい、は…さ」

 弱々しい口調だがそんな直人に櫂は淡々と告げた。

「じゃぁ、恋に性別が関係あるって…思う?」

「はぁ?」

 一体何の事か分からなくて直人は眉を顰めた。

「好きになってしまえば男も女も関係ないって事」

「え……」

 沈黙が広がる。

 それって。それって詰まり男同士の恋愛っつー事かよ!

 この学園では全寮制な事もあり、結構その手の事が多い。幾らなんでも直人もそこら辺は気付いているし、だからといって彼らを非難したり、嫌悪したりした事はなかった。

 だが、ここでその話題が出ると言う事は。

「まさか翔、が?」

「そのまさか、さ」

「ええええ!あ、相手って誰だよ!!」

「勿論君も知ってる」

 どんどんと驚きのあまりパニック状態になる。

「でも、この学園にはいない」

「………………え?」

 暫くしてからやっと櫂の言葉が頭の中に入ってきて荒れ狂っていた感情がパタリ、と鎮まるのを直人は感じた。

「いない?」

「そう、いない」

 それでは、好きな奴と離ればなれと言う事になる。それならば何処か遠くを見つめる事が多くなった翔の様子にも納得がいった。

 でも、俺も知っている奴で今いない奴……だって?まさか…?

「君は僕たちが普通の人間じゃないことを知っているだろ」

「それは…まぁ」

 自分自身、一時とは言え体を改造され黒い翼なんぞ生えてしまった事もあるくらいだ。彼らが人間じゃないとかなんとか、そんな事を気にした事はないが、取り敢えず頷いた。

「僕たちは黒い翼と戦うためにウィンフィールドへと行った。結局そこで若林…黒い翼の総帥であったレイヤードと対決し僕たちは勝った。全てを終えて僕たちはこっちの世界へ戻ってきた。この人間界こそが僕たちの生きるべき場所だったから。でも、翔はそれから暫くして気付いてしまった」

「気付いた?」

「そう。自分の想いに」

「……」

 櫂はキィッと小さく椅子を軋ませて立ち上がると窓辺へと歩み寄った。

 空に輝く月はウィンフィールドと変わりはしない。星空は問題にもならない程寂しいが月は同じ様に輝いている。

「戦いの中で。黒い翼の事や国の事。親の事。僕の事。凪の事。そして君の事。色々あって翔は自分の気持ちを全部後回しにしていた。自分の気持ちに自分で蓋をしてしまったんだ。だから落ち着いた今になって気付いて、いつまで経っても中途半端なまま翔は苦しみ続けてる。………僕たちのせい、で」

「御園生…」

 何時だって翔は自分の事よりも相手の事を優先させる。

 結局そのせいで翔は自分の気持ちに気付く前にこの人間界へと戻ってきてしまった。

 だから。

 申し訳なさそうに呟く櫂に直人はなんと言って良いのか分からなかった。

 それを言うなら自分も同じだったから。改造されて、相手に操られて、死にかけて翔に心配を掛けた。

「今では既に国王となってしまった逢坂先輩が好きだなんて」

 何にもしてやれないなんて、と悔しそうに拳を握りしめた櫂を見つめた。

 直人はやっぱり、と思った。何となく話の中でそうなんじゃないかと思っていたから。

「馬鹿だな翔の奴」

 そんな遠くなってしまった人を好きだなんて。

 でも。

「会いに行けばいいのに、行かないって言うんだ。僕たち二人の血が無いと向こうへは行けないから…僕一人が頑張っても駄目だし。最近忙しいのか逢坂先輩もこちらには顔を出さないし、ね」

「ほんと、馬鹿……でもさ、御園生。翔のやつ何か考えているんじゃないか?」

「翔が?」

 櫂としては単純馬鹿としか思えない部分が多い翔が何かを考えているとは思ってもいなかった。

 だからこそ自分が何とかしないと、と思っていた。

「さっき言ってただろ。今は駄目なんだ、って」

「そう言えば…そんな事を言っていたね」

「何時か行く気なんだろ、やっぱり。理由は分からないけど、今は会わないって翔自身が決めていて。それでも好きな奴に会えないのは寂しいから。だから……」

「本当に馬鹿だね」

「だろ?でも、如何にも翔らしいっ」

 もっと楽な方法が幾らでもあるのにと、直人は笑った。

「だから俺たちはアイツを決意を受け入れて、支えてやればいい。多分それでいいんだと思う」

「そうだね」

 そう言って櫂は頷いた。

「だからあんたが自分の責任だなんて考えてる場合じゃないんだよ」

 サラリと言う直人の言葉に櫂は目を見開いた。

「そして俺も、ね。アイツを支えてやらなくちゃいけないんだから」

 罪の意識に押しつぶされている暇なんて無い。

 全く。兄同様、親友とやらもなんて前向きな発想の持ち主か。

 類友。そんな言葉が頭に浮かんで櫂は苦笑を浮かべた。

 でも、だからこそ信じられる。

「分かってるよ」

 呟いた言葉は櫂らしくもなく感謝の籠もった優しいものだった。





 一人、空き部屋の中で電気もつけずに翔はベッドに寝ころんだ。

 そこはかつて来栖が一人になりたい時に良く使っているんだと言っていた部屋だった。

 目を閉じても、閉じていなくても思い出すのは来栖の事だ。

 たった一度。

 たった一度だけだったが、来栖とキスした事を思い出し翔は自分の唇を手で押さえた。

「先輩…」

 不意にこのベッドに押し付けられてキスされた。熱い眼差しで見つめられて側にいて欲しいと言われた。何も深い事を考えもせずうん、と頷いていた。

 だって嫌じゃなかったから。

 キスされるのも。

 彼の側にいるのも。

 本当は好き、だったから。

 傷ついた眼差しで見つめられて、何時も素っ気ない優しさで翔を守ってくれる彼を抱きしめたいと思った。

 守られるだけでなく、自分もまた彼を守りたいと。

 でも。

 その後色々な事があった。

 自分の事。両親の事。櫂の事。瀬那の事。来栖の事。紫苑の事。直人に凪の事。そして黒い翼と白い翼の事。

 みんなみんな色々なものを背負って戦っていた。一生懸命頑張っていた。

 それどころじゃないって。

 知らない内に芽生え始めたその恋に蓋をしてしまった。

 ウィンフィールドで、もの問いたげな眼差しの来栖と視線がぶつかった事が何度かあった。

 でも、翔は来栖が何を考えているのか、求めているのか、願っているのか分からなかった。

 自分の来栖への好きだと言う気持ちに蓋をし、忘れきっていたからだ。そのせいでキスした事さえもすっかり忘れてしまっていた。

「何?どうかしたんですか?」

「あ…いや…なんでもねぇ」

「先輩?」

「なんでもねーよっ」

 そう言って翔の髪をくしゃっとさせて来栖は苦笑した。

 そんな普段のちょっとした遣り取りですら今は懐かしい。

 この人間界に戻ってきて。今までと変わらない日常が始まって暫くしてから気が付いた。

 分かっていた癖に。

 来栖はウィンフィールドに残って国王になったのだと分かっていたのに、今更ながらに彼のいない現実に困惑した。

 何時だって彼の姿を探してしまう。

 櫂の部屋に遊びに行く度に使われていないベッドが寂しくて。


 いない。

 彼は何処にもいない。


 昼休みいつものようにあちらこちらと歩いてまわって。ふと目に付いた手芸部の中へと入っていった。

 くーくーと気持ちよさそうに眠っている来栖がそこにいるような気がして、静かに戸を開けた。

 ガラ…。

 扉を開けて。

 シーンとした部屋の中には誰もいない。

 何一つとして動くものもなく、そこにあるはずの姿がない事に信じられない程の喪失感を感じた。

 ポロリ、と零れ落ちたのは涙だった。

 一度零れ落ちた涙は止まる事がなくどんどんと溢れてくる。

 愛しい、悲しい、寂しい、苦しい。

「なん、で?なんで……なんでここに先輩がいないんだよ?」

 呟いて、翔はギュッと目を瞑った。

 それでも止まらない涙に唇を噛み締めてただ立ちつくした。

 好き、だった。

 ううん。好き。大好き。

 側にいたい。側にいて欲しい。

 彼の笑顔を見たい。声を聞きたい。もう一度キス…したい。

 ハッキリと突き上げてくる気持ちから目を反らす事も出来ず、もう蓋をする事も出来なかった。



 なんで今頃気付いてしまったんだろう。

 もっと早くに気付いていれば。ウィンフィールドにいる間に気付いていれば、来栖と話をする事も出来た。

 暫くして、結局は無理だっただろう、と翔は首を振った。

 決戦を前にしてそんな事を言えなかった。

 国王になるだろう彼を思えば、こっちの世界に戻る自分がそんな事を言えば負担にしかならなかっただろうから。

 だから、仕方がないのだとそう思う。

 彼は国王で。

 自分は人間界にいて。

 遠く離れている。

 相手に好きと告げる事も出来ず、振られる事もなく、決着をつける事の出来ない気持ちは中途半端にゆらゆら揺れているだけで。

「会いたい、よぉ…」

 苦しい。

 でも、忘れられないのだから仕方がない。この想いを抱えていくしかない。

 そして会いたいけど、会えない。

 今彼は国王として頑張っている。自分なんかとは違って本当に慣れない毎日に、仕事にと大忙しだろう。

 黒い翼と白い翼の確執は根深い。来栖がどんなに黒い翼を擁護しようとしても直ぐさまそれが国民に伝わるとは思えない。

 きっと苦労している。

 その証拠に、最初の頃、時折姿を現していた来栖はここ数ヶ月こっちの世界に来ていない。

 それだけせっぱ詰まっているのだろう。

 そんな所に、相手の都合も考えないで「好きだ」なんて言いにいけない。それだけのために会いに行くなんて出来ない。

 迷惑かも知れないのに。

 だって。

 側にいてくれと言われた。キスされた。

 でも。

 好きだと言われた事はない。

 来栖の本当の気持ちは分からない。

 今、放って置かれているのだから本気で側にいてくれと言った訳じゃなかったのかも知れない。でも、一度キスされた事実が翔に淡い希望を与え、恋を捨てきれなくさせ、そして何よりも勇気づけてもいた。

「それでも何時か。何時か俺…会いに行っても良いですか?」

 真っ暗な闇の中、目を閉じた。

 あの時、自分に覆い被さった来栖の熱が今ここにない事が酷く寂しく、現実を翔に突きつけた。

 それでも。

 すぐ側に来栖がいるかのように。

「先輩に会いに行って、好きだって言っても…いいですか?」

 問いかけて。

『ああ。お前が来ないなら俺からいくさ。そして俺がお前を攫ってやるよ』

「え?!」

 どこからともなく来栖の声が聞こえたような気がして翔はビクリと体を震わせて部屋の中を見回した。

 誰もいない、部屋。

 真っ暗な、部屋。

「空耳…?」

 空耳でもいい。嬉しくて。もっともっと来栖の声を聞きたかった。

「先輩…来、栖…」

 呼びかけた名前は胸に切なく愛おしい響きだった。

 いつか。

 何時かもう一度帰る。

 あの国へ。大好きな人が治める美しい国へ。

 例え来栖が受け入れてくれなくても。そうであっても。

 胸の痛みも、心の傷も全て彼のため。

 もっと強くなって何時か彼の元へ行く。

 彼を守る盾になる。剣になる。

 いつか。





 数ヶ月後。

「櫂」

「水落先生…どうしたんですか?」

「いえ、これを…あなたが知っているのか、と思いまして」

 そう言って寮の廊下で呼び止められた櫂は瀬那から渡された紙を見た。

 それは進路希望調査表。

 名前は羽村翔と書かれている。だが、進路先は白紙のままだ。

「これは?」

「先日何故白紙なのかと私も質問しました。そしたら…」

「そしたら?」

 フワリと瀬那は苦笑を浮かべて見せた。

「ウィンフィールドへ行って近衛に士官するんだとかで」

「こ、近衛って…翔が?!」

「はい。後で翔自らあなたに話があると思いますが、一応君にも伝えておこうと思いまして」

 驚きに目を見張る櫂に瀬那は優しい眼差しを向けた。

 父も母もいない。いるのは兄だけ。そんな中唯一の肉親である翔がウィンフィールドへ行こうとしているのだ。櫂が寂しさを感じないはずがなかった。

「そうですか」

 寂しかったけれど、以前直人が言っていた翔の考えというのがこれの事かと思った。

 これまた翔らしいと思えた。

 前向きでひたむきで、諦める事を知らない。

 これでいいと思えた。もうこれ以上悲しげな翔の姿を黙って見続けるには忍びない。

「いいんですか?」

「ええ。これが翔の決めた道で。そして、翔が幸せになってくれるんなら」

 そう言って櫂は瀬那に心からの微笑みを返した。

「それに、僕はレイヤードとこっちの世界での接触が多いですから。大丈夫ですよ」

 既に何度も連絡を取っている。主に御園生コンツェルンの経営状態から経済的支援の話なのだが、その中に来栖と翔の事も実は含まれていた。

 ああ、と納得顔の瀬那は悪戯っぽく目を細めた。

「ふふ…青木君もいますし、ね?」

「………」

 瀬那の言葉に櫂は目を見開いて言葉を失った。

 翔の事を二人で話して以来、二人は一緒に翔を支え続けてきた。そして、お互いがお互いを知り、今では微妙な関係になりつつあったのだが、何故それを学園に戻ってきたばかりの瀬那が知っているのか。

「さて、あなた達が卒業した後、私はどうしましょうかねぇ」

 そう呟きながら瀬那は自分の部屋へと帰っていった。

 自分が見守り続けてきた双子はそれぞれが自分の生きる道を選び、一生懸命頑張っている。

 寂しさを感じない訳ではないが、歓びも大きい。

「私も自分の生きる道を…選びましょうか」

 全てが終わり、真理の墓前に報告を済ませると瀬那は旅に出た。もう既に真理との約束は果たされた。これからの人生は瀬名自身が選び取らなければいけない。

 自分を捜す旅。自分の生きる道を探す旅だった。

 幾つか見つけた道を前に瀬那は一旦振り返った。そしてもう大丈夫と分かってはいるが双子が気になってこの学園へと戻ってきてしまった。12の時からずっと見守っていたのだ。双子は瀬那にとって自分自身も同然で、そう簡単に自分から切り離せるはずもなかった。

 この学園に戻ってそれ程時間は経っていないが、彼らが卒業するまでは道を選ぶ時間がある。

 どうなるかまだ分からない。

 取り敢えず、ウィンフィールドにいる両親や弟に会いに行くこうかとも瀬那は思った。

 翔の選んだ生き様を見届けるのもいい、そんな風に。

 真っ直ぐに光り輝く彼の生き様はきっと素晴らしいだろう。

 その輝きで自分に新しい道を指し示してくれるかも知れない。

「全ては大分先の事、ですが」

 楽しそうに呟きながら瀬那は扉を開けた。

 部屋の中にはピピがいて迎えてくれる。

「ただいま、ピピ」

 そう、告げた。





 会いに行く。

 まずは剣道部を全国へ連れて行って。約束を果たしてから。

 卒業をして。

 来栖に相応しくなれるように強く、少しでも大きな人間になって。

 だから。

 待っていて。

 今すぐにでも会いたいけど。寂しいけど、我慢するから。頑張るから。

 だから。

 逢坂先輩。

 ううん。クリス。

 俺の還る場所はあなたの側だって思っているから。

 ただいま、と。

 言わせて?



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